かんづめステップ

一歩一歩。勘を培う。

集大成と新世代が交錯する『M-1グランプリ2018』

12月2日(日)、今年も『M-1グランプリ2018』が放送されました。

natalie.mu

 2015年末の復活以来、4度目。2010年以前は、もっと年の瀬の迫った時期の放送でしたが、近年は12月第1週に放送されることが通例になっています。この時期にチャンピオンを決定しておくと、そのまま年末年始特番にもチャンピオンが出演できるスケジュールですね。

今年は放送時間も拡大。3時間半の長丁場でしたが、さすがに長過ぎ…。
大仰な煽りVTRと緊張感あふれるスタジオを、じっくり時間を使って演出する構成はM-1グランプリにおいて大歓迎なのですが、それでも「笑神籤(えみくじ)」を引くまえのアスリートとのトークゾーンとか蛇足だった。

時間を埋めるためか、ネタ終わり後にほぼ毎回、審査員7人全員にコメントを求めていたのも気になりました。
これまでは各ネタごとに審査員2~3人に聞く程度でした。
今回、上沼恵美子立川志らくの採点や審査コメントに賛否が起こっていますが、それ自体の良し悪しもさることながら、横並びの審査員ともここまでの自分とも違うコメントを毎回求められてしまうことで必要以上に整合性や齟齬が粒立てられてしまっていたことに起因しているんじゃないでしょうか。
審査員にも個性があって然るべきで、ときには険のある審査だってM-1グランプリの大事なアクセント。一概に鳴りを潜める必要はないと思いますが、安易な放送時間拡大については今後見直してほしいですね。


…と肝心の漫才以外の前置きが長くなってしまいましたが、今回のM-1グランプリを振り返っていきたいと思います。

 

最年少優勝の大金星、霜降り明星

M-1グランプリの在り方についてアレコレ言っちゃいましたが、霜降り明星の瑞々しい感性がそんなことを吹き飛ばすように一気に優勝まで掻っ攫ってくれたのが痛快でありました!

せいやのコミカルさと、粗品の核心を突くツッコミ。2人の持ち味が存分に発揮されるいつも通りのスタイルでしたが、M-1グランプリが持つ高揚感や出番順の運も手伝って、観客も審査員も視聴者をもすべて味方につけて空気をモノにしていくサマは圧巻でした。

オールザッツ漫才フットカットバトルで19歳の頃に優勝して一躍脚光を集めた粗品が、せいやという相方を得て、着実にステップを駆け上がってきているというのは熱い。
今回のM-1グランプリ決勝進出も、いい躍進の機会になればと期待はしていたけど、まさかの優勝ですよ。
若きスターがなかなか生まれないと言われて久しいお笑い界で、最年少チャンピオンに輝いてくれたのは本当に嬉しい。
キングオブコントを制したハナコも若かったし、今一度、新世代による新しい時代が来るんじゃないかなあ、と胸踊ります。

 

悔しさ滲む準優勝、和牛

対照的に生放送中、最後まで悔しい表情を隠せなかった和牛
これで3年連続準優勝、目の前で優勝を逃す苦汁を舐め続ける結果に。かつての笑い飯麒麟も経験していない戦績を残しているやるせなさは、見ているだけでも辛かった。
ネタが悪いわけじゃない、前年より進化した成果を見せ続けていながらあと一歩及ばない。

来年こそは…と希望を繋ぎたい反面、霜降り明星の優勝が、M-1グランプリに求められている空気そのものを変えてしまった気もします。酷なことを言ってしまうと、準優勝でありながらここから来年、和牛がM-1優勝する画が想像できないと言うか。うーん…。

 

ラストイヤー、三者三様

今年3月『めちゃイケ』最終回でM-1優勝を宣言し、勝負を図ったジャルジャル
「国名わけっこ」はめちゃくちゃ面白かった。
なんでこれが面白くなると踏んで作り始めたのだろう、とホント頭の構造が気になるジャルジャルならではの発想力の凄さ。余韻が残る昨日、今日とついつい「♪ゼンチンドネシアゼンチンドネシア」と口ずさんでいます…笑。

最終決戦、「ジャルジャルです」と連呼するネタでジャルジャル最後のM-1グランプリ舞台を締めくくったのも印象的だった。優勝こそ成らなかったものの、福徳の涙から1年、そこに悔いはなく全幅の漫才をやり切った表情に見えて感慨深かった。

 

M-1グランプリに賭ける意気込みは人一倍だったであろうスーパーマラドーナ
考えに考え続けた挙げ句、どのネタが最適なのか見誤ってしまった感が否めないのが正直な感想です。サイコ系はいいんだけど、その展開にもう一声欲しかったかな。本意ではないだろうだけにここで敗退してしまうのが歯がゆく悔しかった。

率直にM-1グランプリへの感謝を述べて退場した武智の姿がカッコよかった。…のですが、盛大にケチがついてしまいましたね。これはアカンわ。
「クソが」「更年期障害かと」 とろサーモン久保田&スーマラ武智、M-1放送後の上沼恵美子への暴言を謝罪 - ねとらぼ

 

ギャロップは、今年がラストイヤーで決勝戦へは初進出。
審査コメントにも出ていましたけど、もう安定感がありすぎましたね。しっかり安心して見られる演芸が展開されていて、M-1ナイズドされた4分間の漫才ではなかったのかな、と思います。ベテラン。林の薄毛ぶりも、十数年前はインパクトあったけど年相応になってきちゃったなあ。

 

勝戦2年目の勝負

敗者復活戦を制して決勝戦へと躍り出たミキ
個人的には、決勝進出者発表で名前がなくて一番ガッカリしたのが彼らでした。ただ昼間の敗者復活戦は、ちょっと伸び悩むネタかなーと心配も過りましたが晴れて決勝進出できて良かった。

そしたら、とんでもないネタを隠し持ってましたね!
ジャニーズ、欠員出てるグループが多い、SMAPに入りたかった…
思わずヒヤヒヤするようなキラーワードを盛り込みつつ、兄弟ならではのテンポで畳み掛けていくサマはまた昨年とも違った気概が感じられた。
最終決戦進出こそ叶わなかったものの、1年で敗退していくタマじゃないという健在ぶりを見せていて翌年以降に期待です。

 

キングオブコントとの二冠を狙うかまいたち
にゃんこスターに対抗して、冗談交じりによくクチにする「ネタの厚みが違う」の言葉は伊達じゃない。漫才の台本の構成力で言えば、今大会一番だったんじゃないかと思います。

「もしタイムマシーンがあったら何がしたい?」から始まる、不毛と正論の言い争い。次第に理屈と屁理屈が反転し、立場が入れ替わっていく話の転がし方は見事でした。今年のM-1グランプリ全体としても、会場の空気を最初に笑いでこじ開けたのは、かまいたちだったんじゃないかなと思います。

 

ゆにばーすは、なんか奮いませんでしたね…。
川瀬名人が序盤に噛んだことでテンポ感がズレちゃったのか、はたまたネタ選択か。とりあえず、まだ引退する様子ではなく闘志が燃えていそうなので安心でもありました…汗。ゆくゆくは女性チャンピオンの誕生というのも見てみたいから、頑張ってほしい。

 

初進出組が残した爪痕

今大会のダークホース、トム・ブラウン。どんな漫才をやるのか知らずに決勝戦を見ました。
まさしく“なにが飛び出してくるのか分からないワクワク感”…をそのまま体現したかのような飛び道具満載で面白かった。
むちゃくちゃな設定ないっぽう、大喜利にきっちり答えていってくれる安心感のある構成でもあって、そのギャップが終始クセになる感じでした。

オードリーの後輩ということで、オールナイトニッポンでの応援を聞き及んでいました。いっぽうで、2008年の自分らの準優勝という結果は抜いてくれるな、とも…笑。
そういう点では、大きなインパクトを与えつつ6位という結果は、Win-Winじゃないでしょうか、なんてね。

 

見取り図は、昨年敗者復活戦で披露していた「あたおか」が大好きだったのが期待していました。
今年も「あたおか」を入り込んできたあたり、やはり代表作なんだろうな。
でもネタ中盤から急カーブして放り込んできた感も否めなくて、4分間にあれもこれもと欲張って入れ過ぎちゃったのかなあ、って気がしました。
ただでさえ伏線回収の妙で楽しいネタだけに、それ以外はシンプルにストンと展開した方が良かったのかなあ。

今年のM-1グランプリ、そして未来…

2015年に復活して以降、計4回総じて恐ろしいクオリティの漫才揃いだったと思います。
その理由のひとつとして「出場制限を芸歴10年以下から15年以下に引き上げた」ことがよく挙げられています。この上げ幅5年分の円熟ぶりが、以前のM-1グランプリとは違った質を誇っていた。
実際この間のM-1グランプリを象徴していたのは和牛、スーパーマラドーナジャルジャルといった面々がしのぎを削り合っている姿だったと思います。

 

今年は、ラストイヤーを迎えるコンビも出てきて、その「集大成」の様相になると思っていました。
しかし蓋を開けてみれば、彼らより遥かに若い20代、歴代最年少コンビによる「新世代」の鮮やかな優勝で幕を閉じた。

 

M-1グランプリは、かつてのようにもっと若手芸人の大会であるべきだという空気を感じました。
今後、この相反する針がどちらに振れていこうとしているのかは分かりません。しかし、早くも来年のM-1グランプリが楽しみにもなった大会でした。

そして、霜降り明星の今後のさらなる飛躍が楽しみです。おめでとうございました!

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