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手のひらの上で踊る快感…『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-&-運勢編-』

一昨日、映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』を観てきました。

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劇場公開に合わせて放送された新作スペシャル『コンフィデンスマンJP -運勢編-』も、もちろん視聴の上で臨みました。

2つはそれぞれ独立したストーリーを持った作品ですが、時系列的には地続きの作品でもあるので、この記事で一気に2作品のレビューへ参りたいと思います。

この記事に核心に迫るネタバレはありませんが、ネタバレを避けるために選んだ言い回しで勘の良い方なら察してしまえる部分はあるかもしれませんのでご容赦を。これから観る予定のある方は読まない方が賢明かも。

ちなみに…ネタバレしないための言い回しは、公式ツイートや『運勢編』の副音声トークも例外にあらず。完全にネタバレを防ぐのって難しいね。

 

『コンフィデンスマンJP』とは…

 昨年4月クールに放送されていたフジテレビ系ドラマ。
ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)の3人が、世の悪人から大金を騙し取る信用詐欺師=コンフィデンスマンの活躍を描く
…と書いちゃうと、ちょっと堅苦しい義賊っぽい印象ですが、実態はお金大好きハイテンションな天才ダー子の知謀が痛快なコメディ作品です。

おサカナ(=ターゲット)を騙すため、多数の子猫ちゃん(=詐欺に協力するエキストラ)とともに壮大な罠を仕掛け、視聴者をも欺き二転三転するストーリーが魅力的。
リーガル・ハイ』でも手腕を発揮した、古沢良太の脚本が光ります。

 

4人目の仲間として登場した五十嵐を演じた小手伸也が、このドラマをきっかけに大ブレイクを果たしたのも劇的でした。
運勢編&ロマンス編では、さらなる八面六臂の大活躍が用意されていて感慨深いです。シンデレラおじさんの快進撃は止まらない!
そしてこの4人に加えて、ダー子の一番弟子・モナコ(織田梨沙)も新たに仲間入り。このチームワークもまた見どころになります。

 

運勢編

◆ストーリー・『運勢編』| コンフィデンスマンJP - フジテレビ
◆コンフィデンスマンJP 運勢編|民放公式テレビポータル「TVer(ティーバー)」

まずは5月18日(土)放送の新作スペシャル「運勢編」。
リンク2つ目のTVerにて現在なら無料視聴も出来るので、興味があればちょろっと観てみるのもいいですね。

 

今作のおサカナは、投資家とは名ばかりの闇金業者・阿久津晃(北村一輝)。
ダー子らが仕掛けた最初の攻勢をあっさり見破った強敵。以来、ダー子は運にも見放される日々。誰に対しても作戦は空回りし、次第に3人は離ればなれ、それぞれを道を歩むことに。
新天地でボクちゃんが遭遇したのは悪徳な遺品整理を行う渡辺若葉(中山美穂)、一泡吹かせなければと決意する。リチャードは、偶然入った中華料理屋をひとり営み、借金に苦しみ韮山波子(広末涼子)を助けようと打開策を練る。そしてダー子は、静かに阿久津へのリベンジに燃えていた。

 

待望の同時並行ストーリー

『コンフィデンスマンJP』がスペシャル化&映画化するなら、ぜひやってほしかったのが複数のおサカナを相手に同時並行で進行するストーリーでした。
連ドラ版は1話につき1人のおサカナを軸に展開しながら、別の回のキーアイテムが画面に映り込んでいたりして、この世界観のなかでは複数の詐欺が同時進行で画策されていたことを匂わせていました。

であれば、その同時並行を見せ場にしたストーリーが観てみたかった。
実際は、3人がバラバラになってしまった後で、それぞれが単独で暗躍するというストーリーで、必ずしも望んでいた「複数案件を縫うように作戦を進めていく」ものではなく趣きは異なりますが、エッセンスは多分に出ていたと感じました。
一進一退、3人の作戦がテンポよく展開されていくのは見ていて楽しかった。

一方で、代償として仕方ない面もありますが、おサカナ1人あたりの描写が、どうしても弱かったと感じてしまったのも本音。
阿久津晃という、かつてない強敵を登場させながらも、どうして彼がダー子を打ち負かすほどに強敵たりえるのかということに納得感が持てなかったと言うか。前半の時点から、もうちょっと重厚な描写が欲しかった。

 

ドン底からの逆転劇

シリーズのなかでも屈指の手強さを誇った阿久津晃。
序盤のファーストラウンドに留まらず、リベンジの場でも一筋縄では行かず。ドラマ上、「どうせ最後は勝つんでしょ」という都合は分かっていながらも、なかなかヒリヒリさせてくれます。

だからこそ、負けたと思った末のダー子の“宣言”が痛快
最初はバラバラだった3人の作戦も、この最終盤になってようやく同時に描いてきた意義が示され、収斂していくサマも鮮やかでした。
スペシャルらしい通常回では出来ない、横の広がりがきちんとあって面白かった。

 

布石

そんなスペシャルのなかで、聞き捨てならないセリフがありました。

「香港で占い師の役をやってもらったろ?」
阿久津との対決以来、ツキに見放されたダー子に対して、リチャードが言ったセリフです。このドラマらしい仕掛けで、思わずニヤリとしましたね。

 

ロマンス編

 …と言うことで映画「ロマンス編」です。

confidenceman-movie.com

舞台は香港。つまり前述のセリフと照らし合わせれば、このロマンス編は運勢編より以前のストーリーだったということが明示されます。
新たな仲間・モナコの加入も、このロマンス編で描かれます。

正直、事前情報を見ている時点では3人…いや4人か…に今さら新キャラが加わることには抵抗があったのですが、モナコがこのロマンス編には欠かせない存在として登場しているので、終わってみれば大好きなキャラになりました。

 

深い騙し合いに尽くす

スペシャル「運勢編」とは対象的に、「ロマンス編」で狙うおサカナはただ1人。

香港マフィアの女帝、氷姫の異名を持つラン・リウ。演じるは竹内結子
竹内結子については、1月クールのドラマ『スキャンダル専門弁護士QUENN』について書いた記事の最後に、『コンフィデンスマンJP』へのゲスト出演に対する期待にも書き添えていました。
◆軽妙洒脱…『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』 - かんづめステップ

まさしく、そのときに抱いた期待に違わない好演だったと思います。氷姫、堪らなかった。

 

おサカナは1人でも、もちろんキーパーソンは彼女1人だけではなく…。
同じくラン・リウを狙う、かつてのダー子の詐欺師仲間にして元恋人?ジェシー(三浦春馬)。連ドラ初回「ゴッドファーザー編」でダー子らにやられた赤星英介(江口洋介)も復讐に燃えて再登場
ラン・リウが持つ、パープルダイヤを巡って三つ巴の騙し合いが繰り広げられます。

「運勢編」が横の広がりならば、「ロマンス編」はこの一点を持って深く深く、そのスケール感を演出してくれる

 

逆転に次ぐ逆転

深くじっくり描くからこそ正直、中盤はちょっと退屈な時間もありました。
ダー子とジェシーの恋人関係に焦点があたったり、ラン・リウとの駆け引きがなかなか進展しなかったり。溜めて溜めて、雌伏の時間。ロマンスに焦れったさは付き物です…なんて。

 

だからこそ佳境を迎え、あるタイミングをきっかけに怒涛のように訪れる逆転に次ぐ逆転の仕掛け。堰を切ったようにノンストップ。

「さあ、どこからだ。この2時間ものストーリーのどこから覆してくれる!?」
その興奮と期待を裏切らない大仕掛けが待っていました。
だよねだよね、ここまで覆して見せてくれてこそ『コンフィデンスマンJP』だよね!…と胸が高鳴ってましたね。

この流れを受けての、シリーズ恒例の祝勝会シーンがこれまた堪らない。ダー子ちゃんならずとも惚れます。

 

巧みな構成が生む、嘘偽りのない嘘

そして頭の中で映像を反芻してみると、大ドンデン返しがありながらも、それまでにシーンに確かに「嘘」がないんですよね。
もちろんダー子たちはおサカナに対して、嘘の言葉や情報を仕掛けてきます。
しかし、小説で言うところの「地の文」にはいっさいの嘘がなかったと気付かされます。
見入ったあのシーン、感情移入せずにはいられないあのシーンも、紙一重の妙で嘘ではなく成立している

 

もちろん全部のシーンを鮮明に覚えているワケじゃなかったので、あのシーンはどうだったかな…と引っ掛かっているシーンもあります。
たださすがに映画館にリピート鑑賞しに行く習慣がないので今すぐ確認することはやめておきますが、いずれブルーレイやテレビ放送された暁には、結末を知っているからこそまた頭から観てみたいという楽しみがありますね。

 


『コンフィデンスマンJP ーロマンス編ー』 予告②【5月17日(金)公開】

今この予告編を見ると、また別の見え方してきて楽しい。

 

嘘はいつだって真実より魅力的♥

総じて『コンフィデンスマンJP』の映画化という期待に応えた、最高の作品だったと思います。
面白かった!

ドラマファンだった方にはぜひ観てほしいし、そうじゃなくても観てほしい。
…ただ、ここは公式ブログじゃないので「映画だけ観ても楽しめます」という都合のいいことは言わないでおこうかな…笑。少なくとも連ドラ第1話「ゴッドファーザー編」、第7話「家族編」を観てから臨むと、より楽しめると思います。他にも小ネタ多数。

 

作品内の時系列的には映画「ロマンス編」のあとに、スペシャル「運勢編」が展開されているように。
今作がひとつのピーク足り得ることは間違いないですが、『コンフィデンスマンJP』の世界はまだまだ鉱脈が残っている気がしてなりません。すぐにとは行かないかもしれないけど、さらなる展開を楽しみにしたいと思います。

ダー子の手のひらの上で、もっとももっと踊りたい。嘘はいつだって真実より魅力的♥