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待ち望んでいた逆転劇…『コンフィデンスマンJP 英雄編』

映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』を観てきました。


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長澤まさみ主演のコンゲームシリーズ。
2018年のTVドラマを皮切りに、劇場版としてはシリーズ3作目。前作『プリンセス編』からは1年半ぶりとなる最新作です。

 

これまでの劇場版を彩ってきたキャストの悲しい報せが相次ぎ、また長引くコロナ禍も相まって、シリーズとしては岐路に立たされていた面もあったかと思いますが。
そうした中でようやくお披露目された今作『英雄編』は、シリーズとして再出発の一作と捉えることも出来そう。

 

それでは『英雄編』がどうだったのか、見ていきましょう。
※直接的なネタバレ表現は避けていますが、これまでのシリーズ作との比較など、これから鑑賞予定の方にとっては興を削いでしまう内容が含まれます。ご留意ください。

 

confidenceman-movie.com

 

マルタ島で繰り広げられる騙し合いバトル

今作の舞台は、中世の街並みがスクリーンに映えるマルタ島ヴァレッタ

ダー子(長澤まさみ)、ボクちゃん(東出昌大)、リチャード(小日向文世)らおなじみ信用詐欺師の面々が、英雄「ツチノコ」の称号を賭け、今回は協力体制ではなく騙し合いバトルを繰り広げる

オサカナは、ジェラール・ゴンザレス(城田優)。彼が所有する「踊るビーナス」像を勝ち取らんと、3人の抜きつ抜かれつの策謀が始まる。

 

言うなれば今作は一種のエキシビジョンマッチ
ストーリーの導入もいつにも増してキュッと短く、最初からテンション高めの開幕宣言で期待が高鳴る。

3人の行方を追ってインターポールのマルセル真梨邑まりむら(瀬戸康史)や昔気質の刑事・丹波(松重豊)マルタ島に現れ、捜査の手が及び始める。果たして「踊るビーナス」像を手にするのは誰なのか、そして捜査の包囲網を切り抜けることは出来るのか。

 

…と、このあらすじもどこまでが本当でどこからが嘘なのか。
ひとときも油断ならない「コンフィデンスマンJP」の騙しの手口は今作も健在でした。

 

 

逆転に次ぐ逆転、エスカレートしていく逆転劇

前作『プリンセス編』が、シリーズとしては異色の結末を迎える作品になっていてみどころもったのですが思うところもありました。

potara.hatenablog.com

 

そして今作『英雄編』。

これぞ「コンフィデンスマンJP」!…っていう回帰をしてくれたと思います。
1時間、2時間と積み重ねてきたストーリーを根底から引っくり返していく仕掛けの数々は「コンフィデンスマンJP」ならではの爽快感を覚えます。

 

ストーリーの構造自体は劇場版第1作『ロマンス編』に近いです。

そこに三つ巴バトルによる視点の切り替えなんかも巧みに織り交ぜていくことで、よりパワーアップした逆転劇が待ち構えていました。

また性質上、視点や時系列があちこちに飛びながら展開されていくにも関わらず、混乱せず見易く落とし込まれていた構成力も見事だった。結末を知った上で、あれ?どうだったっけ…というシーンがひとつふたつあったので、ゆくゆく動画配信やBlu-rayで再確認したいところ。

 

パワーアップと言えば…。
今作のオサカナの怪演ぶりも見逃せない。シリーズを追うごとにインフレしがちな要素だけれど、存分に全うされていた。
キャストのほかの出演作を見てもしばらく引きずりそうなインパクトだった。

 

シリーズ恒例となっている赤星栄介(江口洋介)の登場。
個人的にはマンネリを覚えて食傷気味になっていた要素なのですが、今作の赤星は一捻り効かせた登場と展開を見せていて、そこもちゃんと抜かりないんだ、と嬉しかった。

ジェシーやスタアについて言及されていたのも誠実でしたね。

 

総じて、自分が待ち望んでいた「コンフィデンスマンJP」ここにあり!という感じで大満足の内容でした。

 

 

「待ち望んでいた」からこそジレンマ

待ち望んでいた…これぞ…回帰…。
言い換えればデジャ・ビュ、『ロマンス編』の延長線上だったと感じたのも本音。
パワーアップしていたと言っても、『ロマンス編』を初めて見たときの高揚感には一歩及ばないと言うか。

 

その枠外へと突き抜けつつ、新たな「これぞ『コンフィデンスマンJP』」と言わしめる驚きを求めていたのも事実で、見たいものを見たかったのか否かジレンマも覚える。
高望みかもしれないけれど、そこはまた次回作への宿題なのかな。

 

実際、今作『英雄編』のなかで、続編への含みを持たせたセリフもありました。
本シリーズの脚本・古沢良太氏は、2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』を手掛けることが発表されているので続編は当分、先の話にはなるかもしれませんが気長に期待したいところです。