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軽妙洒脱…『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』

2019年1月クール、『いだてん ~東京オリムピック噺~』と並んで観ていたドラマが『スキャンダル専門弁護士 QUEENでした。

 

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スキャンダル専門弁護士 QUEEN - フジテレビ

弁護士ドラマはわりと好きなジャンルですが、今作を見始めた大きなきっかけが竹内結子中川大志
2016年のNHK大河ドラマ真田丸』で、茶々と豊臣秀頼という親子を演じた2人。思い入れのある作品だったので、その2人の再共演というのは、ついつい注目してしまいました。(ついでに阿茶局(斉藤由貴)も脇を固める!)
キャスト1人1人や脚本家などではなく、「この共演が見たい」って動機で見ようと決めたのは初めてかもしれません…笑。

 

スピンドクターの活躍を描く

いわゆる炎上や文春砲に対する危機管理や情報操作に長けた弁護士・スピンドクターである氷見紅(竹内結子)を中心に鈴木法律事務所の面々の活躍を描くドラマ。世論誘導のためには、嘘もリーク合戦も謝罪会見の指南もなんでもこざれ、あっけらかんと描かれていく。
そこのリアリティを失わないよう、氷見らの会話もシニカル的で打算的。それでいて、ふいに無邪気な掛け合いでキャッキャした表情を見せるバランスが魅力的。海外ドラマのようなスタイリッシュな映像演出やファッションも手伝って小洒落たセンスが光る。

新米エリート弁護士・藤枝修二(中川大志)は、皆からのイジられ役。振り回されぶりがチャーミング。真野(斉藤由貴)さんは、事務所をデンと支える事務員。気付けば事件のキーパーソンたる大物にもふところにも取り入っちゃうチート性能の持ち主。その手腕の描かれ方は、斉藤由貴自身の不倫騒動が自虐的にあてがきされてる節もあって、なかなか凄かったです。いやあ、したたか。

そんな中にあって氷見とバディを組む与田知恵。弁護士モノらしい正義感を持ち、氷見とは対照的な性格を覗かせながらもチームワークも発揮する。攻守・硬軟いずれのバランスも矛盾なく存在してて、気付いてみれば彼女こそがこのドラマで一番欠かせない存在だったなあ、と思わされた。水川あさみの好演が印象的。

こういったキャラクターの奔放な魅力は、自身も鈴木副所長役で出演しながらキャラクター監修も務めたバカリズムの味付けが効いているのかな。

 

 

尽きない時事ネタと飽きない着地点

氷見らのもとに舞い込む依頼は、いずれも現実に起こった事件や炎上、議論を思わせる内容が並ぶ。言わば「時事ネタ」。

アイドルの不仲スキャンダル、パワハラ、タレント夫婦のDV/離婚、遺産相続、電子マネー、女性科学者と男女不正入試、政治家汚職
電子マネーの回では、“20億円還元キャンペーン”だとか“クレジットカードのセキュリティコードを何度も入力できる不具合”だとか、かなり細かいディテールまで意識して描かれているケースも。

現実にはなかなか混迷してしまうこれらの事案を、ではどう立ち回っていればスマートな着地点を見出すことが出来ていたのか。再検証するような観点で見ていくのも楽しかったです。

…とは言ってもまあ、そこはドラマ。そんな都合よく行くワケないよ、というご都合主義的な一件落着も多かったのですが。その一件落着の先に、さらにもう一捻り二捻り加えたような展開が用意されていたのが、このドラマが際立って痛快で面白かった部分でした。
たんなる風刺に留まっていない。

その結果、当事者同志がさらなるWin-Winへと繋がるハッピーエンドな回もあれば、核心を突いたからこそブラックに転じる回もある。
そして、どちらの結末であってもあるがまま肩入れしすぎず冷静に、氷見らのまた無邪気な掛け合いで締められるスタンスも良い。


唯一、第3話だけがスキャンダルの渦中と言えども殺人事件を扱ってしまっていて、このドラマにおいて毛色が違っていまいちだったかなあ、という印象です。

逆に第4話で、ママ友トラブルと都議会で繰り返されるマリハラ/マタハラ騒動を絡めた回が、個人的にはお気に入り。
身近な話題から、大きなデモ運動へと世論を繋いでいく氷見のフィクサーぶりが一際大きく描かれ、ドラマ全体としても後半戦への足がかりにもなった回でした。

 

 

最後に挑むは、スピンドクターの本懐

そして最終章に待っていたのが、氷見自身の過去とも関係してくる政治家汚職事件。
第1話の時点から丹念に伏線が張られ続けてて、氷見の一面的ではない素顔は覗かせていたのですが…。その暗部が、スルスルと明かされていくのは、満を持していよいよ事態が動き始めた感があって面白かった。

振り返れば、このドラマ全体が大物政治家を告発するための氷見の長い戦いになっていた。
依頼者に寄り添いながらも大局が有利に運ぶよう画策し、時に疑念を買いながらも好機を演出していく…
権力者を告発するというのは、かくも根回しが必要なのだな。
そう考えると、情報操作や世論誘導のテクニックを描いてきたこのドラマが挑むべき一番のテーマへと帰結して終えることが出来たのでは、と思います。
まさしく、スピンドクターの本懐が描かれた最終章でした。


…と言うことで『スキャンダル専門弁護士 QUEEN』、面白かったです。
茶々&秀頼とは打って変わった、和気藹々とイジられる氷見&藤枝コンビも微笑ましくて新鮮でした。

なにより、強い女性と言うか影を帯びたダークな役を演じる竹内結子がよかった。
若手女優の頃やCMで見せる笑顔もいいけど、今作や『ストロベリーナイト』で演じた姫川玲子のようなテイストのほうが好きですね。
そして…

 


『コンフィデンスマンJP ーロマンス編ー』 予告②【5月17日(金)公開】

 今度は映画『コンフィデンスマンJP -ロマンス編-』で、最大の敵として立ちはだかるようです。
今作に負けず劣らず、騙し合いがキモの作品なので予告編で描かれている通りの敵役になるのかは、ちょっと懐疑的ではありますが、連ドラからさらに輪をかけて楽しみな要素が盛り沢山なので今から公開が待ち遠しいところです。

…今度はきり&豊臣秀吉&茶々、さらに塙団右衛門の再共演でもある…って結局また『真田丸』?笑

スキャンダル専門弁護士 QUEEN (上) (扶桑社文庫)

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