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まぎれもなく若林&山里の芸人譚…ドラマ『だが、情熱はある』

4月クールの日本テレビ系列の連続ドラマ『だが、情熱はある』

オードリー若林正恭南海キャンディーズ山里亮太。これまで「たりないふたり」というユニットとしても不定期的に活動してきた2人の半生を描いたドラマです。

 

www.ntv.co.jp

 

ともに第一線で活躍する人気芸人。でも失礼ながら頂点まで登りつめたとまでは言えない。

そんな現在進行系の2人を、今このタイミングでドラマにする? 放送枠こそ日曜22時30分という連続ドラマだけれども、以前「ZIP!」で放送していた『泳げ!ニシキゴイ』のような企画モノだと捉えていました。(実際、共通のキャストも多い)

 

しかし始まってみれば、そんな杞憂も吹き飛ぶクオリティ。

結果、3ヶ月に渡って毎週欠かさず観ていました。その情熱ぶりを振り返りたい。

 

不気味なくらい若林、山里

若林を演じた髙橋海人(King & Prince)、山里を演じた森本慎太郎(SixTONES)

 

ルックスは正直、若林や山里とは似つかない。

なのに喋り方や仕草などの細かい演技ひとつひとつの積み重ねで次第に、本人そのものにしか見えなくなってくる。

妬みを隠せず捲し立てる山里、やり場のない苛立ちに言葉が詰まる若林。本人かとオーバーラップするようなシーンばかりだった。

 

『だが、情熱はある』は率直に言って、この2人のクオリティに尽きる。

回を追うごとに特徴を捉えていくさまには魂消ました。

 

もはや歌番組で見るKing & Prince、SixTONESとしての表情のほうに違和感を覚えるこの頃だったりします。

(一方でこの2人を起点にして、ようやくKing & Prince、SixTONESのメンバーを把握できたという側面も)

 

 

春日、しずちゃんも抜かりない

もちろんそれぞれの相方も登場する。これがまた抜群に素晴らしい。

春日の奇人ぶりを遺憾なく体現する戸塚純貴しずちゃんの身長にとらわれないキャスティングが功を奏した富田望生

 

そして白眉なのが2人揃った漫才シーン

当該シーンが公式YouTubeで切り抜かれているので、ここで紹介します。(ドラマ放送も終わり、そのうち削除されるのかも)

 


www.youtube.com

 


www.youtube.com

 

それぞれM-1グランプリ2004決勝戦M-1グランプリ2008敗者復活戦をモチーフにしています。

いずれも2組にとって転機となった一世一代の大舞台…というドラマとしてのバックグラウンドを抜きにしても、息のあった丁々発止がシンプルに面白い。

…ってことで『だが、情熱はある』を見ていなくとも、まずはこの動画だけでも見てほしい。

 

当初はその前後や背景を描くだけで、漫才そのものを撮る予定はなかったそうだ。

それが一転して、「漫才シーンを撮らないなんてもったいない」と思わせしめたメインキャスト4人の再現度の高さが伝わってくる。

漫才は2組の転機であったと同時に、『だが、情熱はある』としても賜物のようなシーンだった。

www.news-postseven.com

 

 

本人も舌を巻くエピソードのディテール

若林、山里の2人がこれまでラジオやエッセイで語ってきた下積み時代や売れてからの葛藤といったエピソードが次々と描かれていく。

 

エンドクレジットで参考図書として挙げられているエッセイ… 妬みと研鑽を隠さず綴った山里の『天才になりたい』、その加筆修正版である『天才はあきらめた』、若林がテレビで活躍し始めてからの葛藤とギャップを書いた『社会人大学人見知り学部 卒業見込』、父親との死別をきっかけに視野の移ろいを捉えた『ナナメの夕暮れ』

いずれのエッセイも当時愛読していた自分にとって、お気に入りのエピソードの数々があれもこれもと映像化されていくのが堪らなく嬉しかった

(若林の人となりを知るうえで、『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』もオススメしたい)

 

その丁寧なエピソードの拾い方にファンが唸ったのはもちろんのこと、より細かなディテールの部分で他ならぬ当の本人がラジオやツイッターで驚きの声を漏らしていたのも印象的だった。

 

神は細部に宿る、じゃないけれど。ドラマ制作陣の情熱が、まさしく細部にまで宿っている。

 

 

こっから

時に熱く、時にもどかしく、時に可笑しく。

現在進行系の人気芸人、しかも「たりないふたり」というユニットに端を発したと言えども、その盟友ぶりが必ずしも万人に知られているとは言えない2人を組み合わせて、その半生をドラマにする。

異例尽くしの試みで終始、不思議な感慨がよぎるドラマだった。

 

最終回のエピローグは、まさにこのドラマならではの立ち位置を活かした遊び心たっぷりの仕掛けが施されていた。

 

『だが、情熱はある』は終わりを迎えた。

しかし、2人の人生は現実に続いていく。

半生がドラマ化されるなんていう、かつて「なにもの」かを夢見た頃からは想像できなかっただろう境地から見据える2人の「こっから」に一層、期待しちゃいそうだ。