今年の『FNS27時間テレビ 鬼笑い祭』が面白かった!
7月22日(土)18:30から23日(日)22:54にかけて放送された『FNS27時間テレビ 鬼笑い祭』。
フジテレビ系恒例の長時間生放送お笑い祭りです。
1987年に第1回が放送され、以降その時々で形を変えながらも30年以上に渡って毎年放送されてきました。ただ、新型コロナウイルスの影響もあってここ3年はお休み。
今回の放送は、4年ぶりの復活でした。
同時に、休止前から抱えていた閉塞感にも新たな視点をもたらす復活になりました。
近年のFNS27時間テレビ
今回の27時間テレビを見ていく前に、ちょっとここ数年の振り返ります。
個人的に閉塞感を覚え始めたのは2015年放送の「めちゃイケ!」を母体にした27時間テレビだった。
「めちゃイケ!」が27時間テレビを担当するのはこの2015年が3度目。それ以前に担当した2004年、2011年は出色の内容で、現在もこうして自分が27時間テレビに夢中になったきっかけになった回でもある。
2015年の回は3度目の担当というマンネリ感もあってか、なかなか振るわなかった。
それを受けて、2016年は『27時間テレビフェスティバル』と位置づけ、総合司会の刷新を図り、新機軸を打ち出すもののハネきらなかった。
2017~2019年の3年間は、ビートたけしを司会に据えつつ、テーマはそれぞれ「歴史」「食」「スポーツ」となり、期待する「お笑い祭り」とは距離を置くことに。
そして、新型コロナウイルスの影響で2020年からの3年間は休止となっていました。
4年ぶりの復活。
しかし体感的には、新機軸を打ち出そうとした2016年のリベンジ… 7年ぶりの復活とも捉えています。
千鳥の抜擢
そんな今年の27時間テレビ。
総合司会の白羽の矢が立ったのが、千鳥、かまいたち、ダイアンの3組。
いずれも冠番組を持つ、当代随一の実力者。…いや、ダイアンはちょっと違うかな、なんて。
しかし、2016年当時を思えば、まさか総合司会を務める未来があるだなんて想像すら出来ない抜擢でもあります。
当時の境遇を言えば、千鳥は「いろはに千鳥」が唯一の拠り所だと語っていた頃、かまいたちはキングオブコントを獲る前、ダイアンも上京前。
さらにもう少し年代を遡ってみると…
これは2012年の27時間テレビ。「笑っていいとも!」を母体に実施された年の深夜コーナーでの一幕。
出演者のなかのイニシャル「N」の恋人だというシルエット越しの女性が登場し、暴露トークを展開。このコーナーのトリを飾る企画で、Nの正体を巡ってザワつくスタジオ。千鳥ノブのことではないかと囃し立て始めたときに、ノブ自ら「こんな大事なんに、フジテレビはノブは使わない」と叫んだ。
事実、当時の立ち位置としてこの大事な場面の標的がノブなわけがない。そのことを自ら公言して笑いにしていた。
近年の快進撃を思えば27時間テレビの総合司会というのも納得だが、この経緯を踏まえてると今回の抜擢には隔世の感を覚えます。
今年の27時間テレビのキービジュアルに添えられた「俺たち…こんなに大きくなりました!」の一文も感慨深いってもんです。
鬼レンチャンの醍醐味 健在
今年の27時間テレビで母体となった番組は「千鳥の鬼レンチャン」。
歌手や喉自慢タレントたちが採点カラオケに挑戦、1音も外さず歌い切ることを目指す様子を千鳥、かまいたちの2組がモニタリングしていく。
挑戦する歌手の合否や歌い方に応じて、2組が野次や皮肉を飛ばす。歌手も負けじと2組とVTR越しに言い返す。その掛け合いに、幕間演出やナレーションが拍車を掛け、火に油を注いでいく。この積み重ねが、数々の面白さを生み出してきた番組だ。
「相席食堂」や「千鳥のクセスゴ!」もそうだが、VTRだけを見れば単なるカラオケ番組や旅番組でしかないところを千鳥らがワイプから新たな視点を与えて、面白がり方を加えていくのが堪らなく上手い。
今回の27時間テレビを席巻したほいけんたの「カラダぐぅ~」も、癖が強いアレンジ程度に捉えて聞き流してもまったく不自然じゃないところを千鳥らが面白がり方を与えたことで、今や彼が歌い始めるだけで「来るぞ来るぞ」と欲するようになっている。
その卓越したコメントは生放送でも健在。
採点カラオケに挑戦する模様自体は事前に収録されたVTRだったが、千鳥とかまいたちがその内容に当意即妙でコメントを加えていくさまは本放送と比べても遜色なかった。
生放送のため、コメントひとつひとつがテロップ起こしされなかったのがもったいなかったほど。
VTRへのコメントとして、ひとつ新鮮だったのが「逃走中」。
事前収録された「逃走中」の模様を、23日(日)午前に放送。自らも参戦した「逃走中」を振り返りコメントしていくさまは、ツッコミだけでなく感想戦の様相もあって興味深かった。
今後の「逃走中」でも、さすがに常時ワイプ表示してしまうと趣旨に反するけれど、副音声コメンタリーで感想戦を繰り広げるのは面白いんじゃないかと感じた。
「鬼レンチャン」のレギュラー放送や、この27時間テレビの初日で培われてきた名物やお約束の数々を昇華した「FNS鬼レンチャン歌謡祭」も良かった。
元来が喉自慢揃いの鬼レンチャン出演者陣だけに、採点カラオケの合否を引き合いにやいのやいの言う建付けがなくなれば、辛口なコメントは鳴りを潜めて聴き惚れるだけになってしまう場面が多かったのはご愛嬌。
♪ポップでビートで逃げ出したい
もうひとつお約束が結実した場面として沸き立ったのが「ビートDEトーヒ」。
かまいたち濱家隆一が、NHKの音楽番組「Venue101」でともにMCを務める生田絵梨花と歌った楽曲「ビートDEトーヒ」。
オシャレな曲調と軽快な振り付けが、転じて「鬼レンチャン」のなかではすまして歌い踊っている濱家を茶化す流れがお約束になっていた。
そして今回、22日(土)23時台に裏番組となる「Venue101」とのコラボ放送が実現。
NHKの生放送から生田絵梨花が、フジテレビのスタジオに駆け付け、そのまま濱家とともに「ビートDEトーヒ」を披露した。
近年のNHKのフットワークの軽さを持ってしても、よく実現したなーと思わせられるひと時だった。
ただ、濱家としてはほかの企画の最中になし崩し的に披露するよりも、きっちり立派なステージを用意された上で披露させられるほうがイヤだっただろうな。
マラソン企画の新たなカウンター
「100kmサバイバルマラソン」も面白かった。
脚力自慢のタレントら18人が、過度な休憩時間を設けることなく100km走破を競った縦軸企画。
22日(土)19時にスタートを切り、23日(日)正午前にはもうゴールを迎えていたスケジュール感に驚いたし、なによりゴール目前でのハリー杉山とワタリ119のデッドヒートが熱かった。
言わずもがな、日本テレビ 24時間テレビのチャリティーマラソンを意識した企画です。
長時間生放送番組として偉大すぎる企画だけに、これまでの27時間テレビでも度々カウンターとしてマラソン企画が実施されてきました。
個人的には「めちゃイケ!」が担当した2004年に加藤浩次が100kmマラソンに挑戦したのが印象的。
走る先々で応援ゲストと称してコントを展開したり、マラソン途中にTBSの生放送に出演させたり。マラソンにこんな笑いを入れ込むことが出来るんだ、とその仕掛けに数々に目から鱗だった。
この趣向は、27時間テレビにおけるマラソン企画として恒例になっていった。
ちなみに…さらに端緒を遡ると、1999~2000年の年越し生放送「めちゃ2あいしてるッ!」内で、岡村隆史が走破したフルマラソン企画が根底にあると思う。
そこに来て今回の「100kmサバイバルマラソン」。
パロディではなく、真剣勝負。これまでとはまた違ったアプローチで、チャリティーマラソンの在り方を皮肉って見せ、そして奏功していた。
強豪との渡り合い
フジテレビの並み居る番組、MC陣とのコラボも、27時間テレビの大きな見どころ。
松本人志、明石家さんま、くりぃむしちゅー、有吉弘行、東野幸治…
なかでも大先輩たる松本やさんまらにも、千鳥らが臆することなく対等に渡り合っていたのが鮮烈に映った。
チームDEファイトのゲーム内容や、ラブメイト10も、正直どこか一時代前の古くさい様相であることは否めず、そのこと自体に対してはピシャリと一線を引いて制してくれたのが良かった。
自分が、世代的に「ごっつええ感じ」にそれほど思い入れがないからかもしれないけど、松本が出演するコーナーは素直に「人志松本の酒のツマミになる話」を土台にしたトークコーナーが良かったな、というが正直なところかな。
フィナーレを飾った1時間リレー漫才
2日間に渡って数々の企画を乗り越え、最後に挑んだ「耐久フィナーレ漫才」。
これまで不眠不休の末にボクシングやコンサート、ダンスライブというのはあったけれど、シンプルに「漫才」というのは意表を突かれた。
そして、それがしっかりさまになるのが、千鳥、かまいたち、ダイアンの他ならぬストロングぶりだと見せつけられた時間だった。
締めくくりは、ダイアン津田の「ゴイゴイスー」。
27時間テレビのオープニング来の、あるいは大阪時代から長年に渡って培ってきたものが大団円を迎えるのを見るようで堪らなかった。
この感情のピークが、きっちりエンディングに来るかどうかが27時間テレビ全体の成否や満足感の印象を大きく分ける。
その点でも今回、漫才から間延びせず幕を下ろし、最高のエンディングだった。
ちなみに…歴代エンディングの頂点は、明石家さんまが「しょうゆうこと」を掲げたカットで幕を閉じた2008年だと思う。これはもう抜けない。
新たな始点に
27時間を通した企画の組み立て自体は、これまでの27時間テレビの踏襲も多かったと感じた。
そこに千鳥らの視点を通すことで、こういうアプローチの仕方もあるよね、と視野が更新されていくような27時間テレビだった。
これが今後の27時間テレビへと続く、ひとつの始点になると嬉しい。