かんづめステップ

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2冠&最年少優勝がもたらす展望…『R-1ぐらんぷり2019』

一昨日、『R-1ぐらんぷり2019』が放送されました。

漫才のM-1グランプリに対して、一人芸のR-1ぐらんぷりとして創設されて早17回目の開催となります。なか4年の休止期間を設けたことのあるM-1グランプリよりも、歴史が長い大会だと言えるかもしれません。

natalie.mu

 

…ただ、キングオブコントでもそうなのですが、漫才という決まったフォーマットのなかでの勝負するM-1とは違って、一人芸(コント)であれば何でもありという幅の広さゆえに人それぞれ好みの差が出やすく、「面白さがまったく分からない…」と真顔になってしまうファイナリストを見ることもしばしば。
次第に、どうしてもM-1グランプリに対して、そこまでの期待感を持てなくなっているのも正直なところです。(むしろ近年のM-1のクオリティが高すぎる!)

実際、オンタイムでは『いだてん ~東京オリムピック噺~』を観ていました。
奇しくもこのドラマも、「R」の語源である落語が大きなウェイトを占める作品だなあ、なんて感じながら。そんな「お笑いファン」とはあんまり言えないような浮気者R-1ぐらんぷり雑感です。

 

2冠&最年少優勝…加速する霜降り明星粗品

今年、R-1チャンピオンの称号に輝いたのは霜降り明星粗品でした!

昨年12月、霜降り明星としてM-1グランプリを制したのが記憶に新しいですが、史上初のM-1&R-1 2冠です。加えて、R-1においても最年少優勝となるようです。
記録づくめ。

でも、今年のファイナリスト発表された時点で、優勝しちゃいそうな予感もしていましたね。
M-1優勝が劇的だっただけに、このまま破竹の快進撃を続けていくような「空気」が出来上がっていた。…という言い方をするとネガティブに聞こえるかもしれないけど、その空気を生み出していたのは、紛れもなく彼ら自身だったので納得の結果でもあります。
そして、その空気がネタに奏功していた一面もありました。

粗品が披露した、おなじみのフリップ芸。卓越したツッコミが変わらず光る。
ただ、昨年のR-1ぐらんぷり2018決勝でのフリップ芸とは、スピードが違いました。昨年は「ツッコミかるた」という設定のもと、広く伝わりやすくなるよう工夫してしっかり間を置いた構成を取っていました。一転して今年は、設定(前口上)もそこそこにひたすら畳み掛けるフリップとツッコミのテンポが際立っていた。
ともすれば不親切なのだけど本来、粗品が追い求めていたテンポは今年のものだっただろうし、M-1グランプリ優勝を経て、今年はそのテンポであっても視聴者やお客さんがしっかり付いてきてくれると自覚的に捉えて、臨んだのだと思います。

 

粗品の名を初めて世に知らしめた、2012年のオールザッツ漫才のフットカットバトル、最年少(当時19歳)優勝。結果的に、大枠ではその頃と変わらぬネタで今、R-1ぐらんぷりチャンピオンにも輝いたという原点回帰ぶりが痛快でした。

 

同点準優勝、口惜しさ残るセルライトスパ大須

粗品がテンポの速さに視聴者が付いてきてくれる空気を作ったのだとすれば─
セルライトスパ大須は、赤ちゃんを抱きかかえながら小声で共感ネタを呟くネタでした。小声をしっかり聞き取ろうと耳をそばだて、自然とその世界観に集中してしまう心理的な演出が秀逸だった。

ぼそぼそ呟く芸人自身のキャラクターじゃなく、「赤ちゃんを寝かしつけながら…」というシチュエーション由来の小声。それによって生まれる、共感ネタとのギャップ。
「父親になって改めて思ったことは…、メロンパン専門店ってすごい覚悟ですよね」で勝負ありって感じでした。
もちろん、共感ネタひとつひとつのクオリティが安定していたのも強かった。

最終決戦でも、やはり小声で共感ネタを紡いでいくフォーマットなのだけど、「小声で話さなければならないシチュエーション」の方を転じて見せるというのは新鮮な切り口だった。

最終審査でも、粗品と並ぶ点数まで肉薄しながらも準優勝に甘んじてしまったのが悔やまれます。
…と言うか、同点だった場合に「投票した審査員が多い方が勝ち」というルールはどうなの…と物議も醸してますね。確かにこれのルールだと、「審査員全員から2位評価」された人の方が勝っちゃうことになりますからね。うーん。

 

R-1の舞台を活かした?松本りんす

もう1人の最終決戦進出者、だーりんず・松本りんす
R-1ぐらんぷりは、なんと言うかハゲネタ好きだなあ…笑。昨年のおぐ(ロビンフット)もそうでした。

カツラをカミングアウトし存分に活かして、アキラ100%のような言わば大道芸のようなテイストへと昇華していたのが見事だった。このR-1ぐらんぷりの舞台だからこそ観覧席が沸き、その熱量がテレビ越しにも伝わってくるようでした。

 

そんな松本りんすと対照的と言うか、ひとつR-1において象徴的だったなー、と感じたのがCブロックを争った岡野陽一
始まるやいなやネタが本筋に入ると、観覧席の悲鳴ぶりが今日イチのピーク…笑。まさしく「悲鳴-1グランプリ」(by 水曜日のダウンタウン)に持っていってほしい独特の世界観が展開されていて面白かった。

一方で、風船を付け足し鶏肉が浮かび上がった時には歓声も上がっていたのが印象的。
必ずしも世界観にドン引きっ放しというワケではなく、あくまでネタを楽しんでいるからこその悲鳴であり歓声であり、っていう近年なにかと訝しく言われがちな観覧席のリアクションをどう向き合うべきかを示す端緒な例になっていたと感じました。

…まあ、なので自分は悲鳴/歓声についてはそこまで気にならないけど、それにしてもちょっとこの日のお客さんは笑い過ぎじゃなかったかな?とは正直思わずにはいられなかった…汗。

 

R-1常連組の危惧、今後への期待

そのほか気になったところで言うと、R-1ぐらんぷり決勝常連組がさすが安定感あるネタを仕上げてきているのに、今ひとつ抜けきらないのが歯痒いところ。
マツモトクラブおいでやす小田三浦マイルドルシファー吉岡…。

粗品の優勝…という鮮烈な新世代快進撃が、M-1に続いてR-1でも成し得てしまったことで、もしかしたら今後のR-1ぐらんぷりにおいては厳しい状況が訪れるのかもしれないな、と感じています。
特にR-1の場合、昨年も濱田裕太郎という若き20代チャンピオンを輩出しているので、ほかの大会よりも世代交代が顕著に進んでいる可能性も否めない。

 

natalie.mu

実際、優勝直後のインタビューでも粗品はさらに若い世代の台頭すら言及していますからね。

 

そうなってくるとそれはそれで常連組の底力が見たくなってくるという─。
このせめぎ合いが、向こう数年のR-1ぐらんぷりにおいて、大きな見どころになってくるのかもしれませんね。芸歴制限のないR-1ぐらんぷり、まだまだM-1グランプリには生まれないドラマが待っているのかもしれません。

 

…しかし、下敷きは高いなあ。

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