かんづめステップ

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大会20周年の再定義…『M-1グランプリ2021』

今年もこの季節がやってきました、『M-1グランプリ2021』。

 

ほかの賞レースの雑感エントリーを書くのが、ブログを始めた当初に比べて段々と疎かになっている中、やっぱり『M-1グランプリ』は別格だな、とつくづく感じます。
今年も一挙一動、食い入るように見ていた大熱戦でした。

 

…と言うことで早速、振り返っていきたいと思います。

 

natalie.mu

 

漫才の再定義

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昨年のマヂカルラブリー優勝に対して、あれは漫才なのかという論争が起こりました。
それを受けてM-1グランプリ自らも今回、「漫才か?漫才じゃないか?そんな議論が起こった。けれど、笑いを起こした奴が勝者だ。」というキャッチコピーを掲げていました。

 

実際、今年の決勝戦メンバーを見ると、その挑戦的な姿勢が反映されているように感じました。
漫才師たちはもとより、『M-1グランプリ』としての挑戦。

 

漫才の定義を問い直し、ふるいに掛けた今年のM-1グランプリ
そうして最後まで残った笑いの核こそが錦鯉であった、と。

 

 

最年長王者の誕生、錦鯉

M-1グランプリ歴代最年長チャンピオンとなった錦鯉

長谷川雅紀は今年50歳、渡辺隆43歳。
昨年の決勝進出ですら予想だにしなかった快挙だと沸かせましたが、多忙を極めたなかで今年2度目の決勝進出からの王座。信じられない光景でした。

 

錦鯉の漫才は言ってしまえば「バカ」の一言に尽きる。

もちろん、数多のテクニックやこの上なく練られた構成がそれを下支えしているであろうことは言わずもがなですが。
一方で「どうしようもないバカだなあ」というお笑い芸人の原初的なあるべき道化の姿を全うしているサマが今大会、一層際立って見えました。

 

錦鯉が1本目に披露した漫才「合コン」

ちょっと話は変わって10年前、M-1グランプリ休止中に開催されたコンテスト時代の『THE MANZAI 2011』。博多華丸・大吉が自身の年齢を引き合いに出して「この歳で『彼女がほしい』、はたして笑えるでしょうか」「我々が出来る漫才には制限がある」と笑いにし、「乾杯の音頭に悩んでる」という賞レースとしては渋すぎるテーマの漫才を披露したことがありました。

そんな当時の華丸・大吉よりも年配の錦鯉が選んだ「合コン」という選択。それが出来ちゃう、通用しちゃうのが長谷川雅紀の唯一無二の魅力ですね。
(もちろん単に合コンじゃなく、年齢的なギャップを存分に楽しむネタだったとは言え)

 

これからM-1王者としての1年。
錦鯉にはこれまでの王者とは比較できない素養が多すぎて、どんな活躍へと発展していくのか、楽しみです。

 

 

悔やまれるオズワルド、インディアンス

錦鯉の圧倒的なインパクトの前に敗れたオズワルド、インディアンスの2組。
両者とも3年連続決勝進出という常連組であり、最終決戦では両者1票ずつ獲得しての同率2位の準優勝でした。

 

オズワルドは、言葉を返せばすぐさま意表を突いてくれる掛け合いの安定感が抜群。
1本目に披露した漫才は、さらに熱量も帯びた構成で絶品だった。その分、2本目にすこし見劣りを感じたのが勿体なかった。

 

息もつかせぬハイテンションぶりがひたすら楽しいインディアンス
決勝初進出だった一昨年は、そのハイテンションに持っていくために無理やり感もあったが、年々スマートで巧みな仕上がりへと結実しているので、来年さらなるブラッシュアップに期待したい。

 

 

敗者復活戦、ラストイヤーのドラマ

今年の敗者復活はハライチでした。

ラストイヤー15年目の凱旋。一度は敗退しながらも着実に敗者復活を掴み取り、決勝の場で締めた勇姿が格好良かった。
敗者復活戦ではネタ時間の大半を黙りこくったかと思えば、決勝戦の舞台では咆哮し続けたギャップ! それぞれで見せた漫才が対になっている趣向とも言えて、もし最終決戦へと進出していたら、次はどんな手を用意していたのかという興味も尽きない。

 

勝戦じゃないけれど敗者復活戦と言えばもう1組、アルコ&ピースもラストイヤーを迎えました。
THE MANZAI 2012』を席巻した「漫才コントの導入が、転じて熱いお笑い論に」というフォーマットが、9年の時を経て、敗者復活戦の舞台でひとつのアンサーへと辿り着いたようで感慨深かった。

 

 

ランジャタイの存在感

M-1としての挑戦”、その真ん中にいたのがランジャタイでした。

奇想天外な世界観と、それを確かに伝えるコミカル且つ自在な表現力に、理屈抜きに大笑いしました。笑神籤2番目、会場としてもまだ温まりきってないとされる番手のなか、冒頭「強風にさらされる」マイムひとつでその世界観に引き込んでみせたのが鮮烈だった。

 

どうしても万人に受けるタイプではなく点数としては伸び悩みましたが…。
その低い点数がオープンするたびに嬉々としておどけて見せたり。ときに波乱を生んできた上沼恵美子からの酷評も、彼らに対してのそれだけは暖簾に腕押しだろうな、と思わせる飄々ぶりだったり。
M-1グランプリとしての権威性や価値観をも揺さぶっているような存在感でした。

 

 

M-1グランプリの再定義

最終決戦こそ決勝常連組で出揃う格好になりましたが、総じて昨年の流れを受けて漫才の幅を広げる大会だったと感じました。
その結果、M-1グランプリとしての意義も広がることになりました。

 

M-1グランプリには、「コンビ結成歴15年以下」…当初は「10年以下」という出場資格があります。
発起人である島田紳助の言葉によれば、この芸歴に達してなお決勝ないしは準決勝に残れず芽の出なかった芸人が「きちんと辞めるきっかけ」になれば、という思いで設けた制限だとされています。

 

今大会、チャンピオンに輝いた錦鯉は50歳&43歳。

錦鯉が結成されたのは2012年。「コンビ結成歴15年以下」には違いないものの、20年前、M-1が始まった頃には想定されていなかったであろうチャンピオン像です。

今回の錦鯉の優勝そのものには異論はなくとも、M-1グランプリとしてこの事象を是とするか否かはまた論争を呼びそうな気もします。
ランジャタイの立ち居振る舞いもまた、M-1の在り方に一石を投じるものでした。

 

漫才の定義を広げ、M-1グランプリの意義を広げ、来年はどんな針路を指し示すのか。
来年も目が離せませんね。

 

Banana

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